木造十王坐像

市40木造十王坐像
種別(指定区分)
彫刻(市指定有形文化財)
員数
四躯
指定年月日
平成7年(1995)3月28日
所有者等
宗教法人 浄円寺
所在地
岩国市周東町三瀬川

十王(じゅうおう)とは、道教や仏教で、地獄において亡者の審判を行う存在で、秦広王(しんこうおう)・初江王(しょこうおう)・宋帝王(そうていおう)・五官王(ごかんおう)・閻魔王(えんまおう)・変成王(へんじょうおう)・泰山王(たいざんおう)・平等王(びょうどうおう)・都市王(としおう)・五道転輪王(ごどうてんりんおう)の10尊である。

浄円寺の「畧縁起」によれば、江戸時代の初め、寺が陽明庵の古跡に移ってきた時には、「今陽明庵残什物大般若経三箱、十王七躰、其外古仏数多並開山位牌等在之」とあり、十王の内七体が残存していたことがわかる。その後三体が失われ、現在、四体が残っている。

像底の墨書の判読により「広王」は秦広王、「江王」は初江王と見られ、それに都市王を加えて三体は尊名を知ることができるが、他の一体については手首から先を欠失しており、持物の特定もできないので、尊名を類推することはむつかしい。
像はいずれも損傷が著しいが、ヒノキ材の縦一材からの丸彫りとし、内刳りは施さない。素朴な彫法ながら円みをおびる面貌はおだやかで、躰部の張りのある形状もよく、小像ながらまとまりのよい均衡のとれた彫像で、室町時代の特色を見せている。特に初江王の像底に「二乙丑八月」、都市王の像底に「永正二乙丑十月日」の墨書が読みとれ、一連の十王像が永正二年(1505年)の製作であることが認められる。
県下に遺存する十王像で紀年銘のあるものは初見で、十王像の基準作として価値が高く、同時にこの地方の中世信仰史を知る上でも重要である。