鮎原剣神社穹崇橋 付 神苑ニ関スル経費明細簿、神社昇格願書

市10鮎原剣神社穹崇橋
種別(指定区分)
建造物(市指定有形文化財)
員数
1基
指定年月日
平成30年(1995)4月19日
所有者等
宗教法人 鮎原剣神社
所在地
岩国市周東町川上字鮎原

鮎原剣神社の参道橋として、現在の県道130号・本郷周東線から対岸の神社境内へ渡るために、川上川に架橋されたのが穹崇橋である。完成は大正6年(1917)で、山口県内に現存する数少ない石アーチ橋の一つである。また、信仰上の理由から曲線を描いたアーチ形(あくまでも形のみ)が採用されることが多い寺社の参道橋の中で、山口県内では唯一、隣り合う迫石(もしくは輪石)同士の圧縮応力によって構造体を支える石アーチ橋である。穹崇橋は、橋長7.195mに対して、アーチ径間(スパン)は7.055m、拱矢は2.903mで、極めて半円に近い欠円アーチとなっており、35個の迫石でアーチが構成されている。なお、地上(人間界)と天上(神界)を結ぶために神社参道の社頭近くに架けられる橋は、参道に位置することから「参道橋」と呼ばれることが多く、またその形態から「太鼓橋」と名付けられたり、宗教的な意味合い(神が通る橋で、通常、人間は通れないこと)から「神橋」と呼称されたりするが、穹崇橋の場合は、空に向かって弓を張っている形から名付けられたと言われる。

付の『神苑ニ関スル経費明細簿』は、支払いの明細を通じて、事前の準備をはじめ、石工や工事関係者、基礎工事の方法、建設資材の種類・数量・価格まで、すべての事項が時系列でわかる極めて貴重な資料である。

『神社昇格願書』の「社殿並工作物之部」には、「神橋 穹崇橋 石造無脚半圓形」「大正六年二月一日 建築 新」の記載があり、穹崇橋の構造、形態とともに竣工日が分かる。また、添付されている「鮎原劔神社全景見取圖」には社殿、参道、神橋(穹崇橋)の他、神苑も描かれており、昭和26(1951)年頃の水害で大部分が流出してしまった神苑の様子も伺い知ることができる。なお、それほどの被害が出た洪水でも穹崇橋は流されなかったということを意味している。